【中編】 ぼくと君の300日@souhyouuto

※続くかどうかは不明



【】



きょうはどこにいったのでしょうか。
いつもふきそくにでていかれますね。
うえのひとはほとんどおんなじようなせいかつなのに。
あなたはとてもきれいずきなひとですね。

夜な夜な消灯後に聞こえてくるとても微かな、それでいて丁寧な口調の声。
最初は幻聴か何かだと思っていたのだが、日増しにおしゃべりになるそれにふと興味本位で答えてしまった。
すると部屋のどこかからか、悲鳴のような、しかしこの上なく喜んでいるような、そんな声が返ってきた。
この世界のことを何も知らないような、でも俺の見たことのない世界を見ているような――、なんというか、夢見がちな考えの声の主との会話を数日は楽しんでいた。
だが、会話が重なるごとに相手の正体が気になってくる。

そもそもここは俺の部屋だ。
築20年は立っているであろうボロいアパートの4階だ。
電気を消すまでは俺以外誰もいなかったのに、どうして彼――これは話をしている中での印象であって、もしかしたら彼女かもしれない――はそこにいるのだろうか。幽霊にしては声がはっきりと存在しすぎているし、いや、幽霊と会話したことがないから本当のところはわからないが。……だとすると、彼が幽霊だとしても分からないではないか。そもそも幽霊はしゃべることができるのか。

単刀直入に声の主に問うと、ぼくをころしませんか?と返ってきた。

殺す?意味が分からない。
そう返すと、

「ころさないとやくそくしてくださるのなら、でんきをつけてください。かくしょうがもてないのなら、きょうはもうねましょう」

と言う。
ますますわからない。

殺す、ということは彼が生きている、ということだろう。つまり幽霊のたぐいではないということだろうか。しかし死んだ人をもう一度殺すことが成仏させる、という意味なら、幽霊の可能性も消えたわけではない。そもそも彼は幽霊でもなんでもなく、鍵を閉めた部屋に難なく入り込めるような超能力を持った人の可能性もある。いやないか。

俺が君を殺す確証でもあるのか?と聞いてみる。

少しの沈黙の後で、きっとそうするでしょうね、と返ってきた。

たった数日話しただけだけど、君には俺がそんな人間に映っていたのかと問うと、またしばらく沈黙の音。どうやら違うらしい。そこはすこしほっとした。
じゃあ、クイズにしましょう、と声がした。

「ぼくとあなたとのクイズです。みっかかんで、ぼくのなまえをあててください。どうわであるでしょう、そういうの。あなたがぼくをみやぶったら、すぐにきえます。みっかたってわからなくても、やはりきえます。あなたはきっと、そうのぞむでしょうから」

決めつけられるのはそう苦痛ではないが、そういうことではない、と言った。

「別に気味悪がって君の正体を知りたいわけではないんだ。ただ、どんな人と会話をしていたのか、ちょっときになってしまっただけだから。君が幽霊だろうと貧乏神だろうとゴキブリだろうと、君と話してたい気持ちは変わらないよ。消えてほしいなんて言ってないだろう」

あ、と声がした。

最初に聞いた時と同じ、恐怖と喜びが入り混じった声だった。






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